第8章 バルバッドへ
キャラバンの仲間と別れ、バルバッド近郊に降ろされたハイリア達は、ジャングルの中を歩いていた。
といっても、貿易の要であるバルバッドまでの道は、とても良く整備されていて、ジャングルと呼べるのは道の外側だけだ。
鬱蒼とした木々に囲まれているのは確かだけれど、獣に襲われる心配もほとんどないのだという。
一本道をただまっすぐ歩いていけば、街へ着くそうだ。
道中、話は自然と思い出話になった。
モルジアナは、アラジンとの出会いについて教えてくれた。
その中で、初めてハイリアは、モルジアナの過去を知ることになった。
ハイリアは、彼女が奴隷だったと聞いて驚いたけれど、盗賊の砦で奴隷にされかけていた人達に対して、なぜモルジアナがあんなにも必死だったのか、ようやくワケがわかった気がした。
金属器使いのアラジンは、弟でも、親戚でもなく、モルジアナを奴隷から解放してくれた一人で、彼女の恩人なのだということがわかった。
こんな小さな少年が彼女を助けるなんて、不思議な話だけれど、彼は迷宮攻略者のようだし、とても優しい少年だということは、盗賊との一件で知っていたから、なんだか納得してしまった。
「じゃあ、モルジアナは暗黒大陸へ向かうんだね」
「はい、バルバッドから船が出ているそうなので、それで向かうつもりです」
「会えるといいね! 故郷の人に」
「はい! 」
にっこりと微笑むモルジアナをみて、ハイリアもつられて笑顔になった。
「ハイリアさんは、シンドリアに行かれるのですよね? 何をしに行かれるのですか? 」
モルジアナが興味深そうにじっと、ハイリアを見つめた。
自分自身のことも語らなければならない空気に、自然と頭が話す内容を選別していた。
語れない内容を省く、その慣れてしまった頭の作業に、なんだか寂しいような、複雑な気分になった。
ハイリアは、気持ちを悟られないようにしながら、ゆっくりと口を開いた。