第2章 序章
人生なんて、暗いことばかりだと思った。
何かを得ていても、いつも誰かに全てを壊され、奪われてしまう。
最後は、こんなわけのわからない迷宮に迷い込んで、恐い化け物に食べられて終わるらしい。
なんてひどいんだろう。悲しすぎて涙も出なかった。
だから、目の前に大きく口をあけた化け物が迫っていても、気にならなかった。
これですべてが終わるのだと、安らかな気持ちにさえなっていた。
それなのに、突如降り注いだ氷の雨のせいで、ハイリアの穏やかな夢は終わってしまった。
強大な魔力をふるい、氷の刃に射抜かれた化け物の死骸の上に、悠々と現れたのは、漆黒の少年。
無数の黒いルフが舞う姿は、まるで黒い太陽のようだった。
「おまえ、おもしれぇもの持ってるな。俺と組めよ! 」
不敵な笑みを浮かべながら、彼は手を差し伸べてきた。
この人が誰なのかは知らない。
けれど、助け出された瞬間、抑えてきた『生きたい』という感情が溢れ出て、彼の手を取らないなんていう選択肢はなかったんだ。