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補佐官様と唇の手入れ

第1章 1


「じゃあ、ちょっと濡らしてきます」

確か近くに洗面所があったはずだ。
そこへ行こうと鬼灯から離れようとしたが、逆に抱き寄せられた。

「わざわざ洗面所まで行かなくても私が濡らしてあげます」
「んむ!」

逃げる隙さえないくらい素早く口付けられ、手を突っ張って押し返そうとした。
本当は鬼灯とキスするのは好きなのだが、つい抵抗するのは怖いからだ。
嫌われたくなくて欲望も本心も隠しているのに、キス一つで理性の殻を全部剥がされそうになる。
唇を割り開いて遠慮なく入ってきた舌はすぐに万葉のそれを捕らえ、弄び始めた。
いたるところを撫で回し、時々吸い上げられては軽く歯を立てられ、その内食べられてしまうんじゃないかと思う。
あふれた唾液は互いの唇を濡らし、顎を伝って流れ落ちた。
頭が朦朧とする。
体が熱い。
下腹部が疼き、足の付け根の奥がとろりと潤うのを感じた。
はしたないとわかっていながらその先を期待してしまい、鬼灯の着物を握る。

「ん…」

つー…と糸を引いて唇が離れていく。

「鬼灯様…」
「…濡れましたね…」

その一言にカッと顔が熱くなった。

「あのっ…」
「…唇…これだけ濡れていればいいでしょう」
「っ…!」

絶対わざとだ。唇が濡れてるなんてわざわざ言わなくてもいい。
どこのことを指して言っているのかを万葉に連想させたのだ。

「どうかしましたか?」
「なんでもありません!」

今の自分の顔は絶対に真っ赤になっているはずだ。
それを見られたくなくて顔を逸らしたが、それを鬼灯が許すわけがない。
顎を掴まれ、真正面から見つめられる。
こうなると万葉に出来るのは力一杯目を閉じることだけだ。
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