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覚えていますか。

第1章 覚えていますか。



君のことが大好きだった。

君も僕のことが大好きだった。

君はいつも僕の前を歩こうとする。

時々振り返って

「遅いよ」

って笑うんだ。



それでいいと思ってた。

それが僕らの距離感なんだって思い込んでた。


それがいけなかったのかな。

君はある日突然、繋いでいた僕の手を離した。

君はもう振り向かない。

僕には見えない所へ

遠くへ

歩いて行ってしまった。


春。

桜が満開になったよ。

いつも2人で歩いた、あの桜並木。

少しくすぐったい春の匂い。

君は覚えていますか。


夏。

日差しがより一層強くなったよ。

2人で行った海。

太陽が反射して揺れる、あの波の鮮やかさ。

君は覚えていますか。


秋。

山のもみじが真っ赤になったよ。

2人で紅葉狩りをしたね。

僕らに親切にしてくれたおじさんにまた会ったよ。

君は覚えていますか。


冬。

またたくさん雪が降ったよ。

2人でスキーをしたね。

雪合戦をしたあの空き地。

君は覚えていますか。


君が僕の前からいなくなってしまってから毎年。
僕は君との思い出の場所を訪れている。

「未練がましい」って、君は怒るかな。

でも、不安なんだ。
君が覚えてくれている自信が持てないから、

僕が、ずっとずっと、
君の思い出と共に、君自身を思い出すように。
今までの君との足跡をたどるんだ。

君は僕と同じように、思い出の場所を訪れてくれていますか。


僕は君を許さない。

僕を置いて行ったことを許さない。

許さないから、僕はいつも君のことを思い出す。


ねぇ、君は覚えていますか。

僕がこんなに君を愛していたことを。

ねぇ、覚えていますか。

こんな僕を見て、

君は


天国で笑っていてくれますか。
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