第3章 次の任務へ
「ここのこと、覚えていてくれたんですね」
「食い物に関して話す時のお前のテンション、引くぐらい高いからな。どうしても記憶に残る」
「そ、そんなに食い意地張ってません!」
「どーだか」
ニヤリ、と笑ったアキに強く否定できない自分がいる。だって、美味しいごはん食べると幸せになるじゃない。
不利な話題は、さっさと変えよう。
「…さっきの任務ですけど」
サラダを頬張りながら、声をかける。無言の目が続きを促している。
「最後のあれは、何だったんですか」
キスしようとしたことを指して聞いた。察しのいいアキならこれで分かるはずだ。
「……ふざけてただけ」
今少し間がありましたけど。
この人はいつも、任務中にも関わらず私をいじめて、からかって楽しむ嫌なクセがある。
でも、キスだとか、そういうことをしようとしてきたのは初めてで。正直ドキドキしてしまったなんてこと、絶対言わない。
「いつかやらかさないで下さいよ?」
「誰に言ってんだ、そんなことしねえよ」
ものすごい自信。
まあ、多少のおふざけで失敗するような人じゃないことは、私が一番知っている。
「そろそろ行くぞ」
腕時計をちらりと見たアキが、眼鏡を胸ポケットにしまって席を立つ。慌てて会計を済ませ、後を追った。もちろん経費で。