第3章 次の任務へ
「!」
シャワー室を出た所で呼び止められた。さらりと長い髪をなびかせ、スタイルのいい美人。
「ナツさん」
アキと同じ、幹部の一人。ナツは、入ったばかりだったときからの事を何かと気にかけてくれる。
年も近いし呼び捨てでいいと言ってくれるのだが、直属ではないものの上司だ。とても呼び捨てにはできない。そもそも、ナツの部下ですら呼び捨てにする者などいないのだから。
「さっき戻ったんだって?お疲れ。お風呂くらい、帰ってゆっくり入ればいいのにー」
「そうしたいんですけど…たぶん寝ちゃうんで」
ナツの言葉に苦笑する。
の所属する組織は、表向き「里中警備」という何とも普通の名前の警備会社だ。しかし、蓋を開ければ猫探しから暗殺まで、幅広く請け負う組織として裏で広く名が知れている。
その存在感から、幹部達のコードネームをもじり「四季」と通称がつくほどに。
「寝ちゃえばいいじゃない」
「また、すぐ任務なんですよ」
「マジで!?」
そう、組織として規模の大きい四季は、大きなビルの中に様々な施設を集約して存在している。
上層階には幹部達がワンフロアずつ居住スペースを持っていて、皆が仕事に出ていても誰か必ず留守を守っている。
それは部下たちも同じ。幹部達ほどはないにしろ、一人で住むには十分すぎるほどの部屋が割り当てられている。