第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
「生まれてきて…生きていて、良かったって思ってくれるか?」
「はい… 真に、」
「そうか…」
翔さんと出逢って
恋に落ちて
僕の人生は変わった
貴方が居てくれたから、僕は…
見つめ合うとその瞳に吸い込まれそうになる
「もしも生まれ変わりというものがあるならば
僕はまた僕に生まれてきます
だから… 翔さんもまた、翔さんの姿形のままに生まれてきてください」
「和也…」
「翔さんさえ居てくれたら、僕は…」
「貪欲だな、お前はホント…」
「では… 月と、ピアノも」
「なるほど、それはいい」
「貴方と 月と それからピアノ
それさえあれば他に何も要りません」
共に月を愛で
共にピアノを弾き
穏やかな時間を翔さんと過ごす事は
まるで夢物語
あの辛く苦しかった日々を思えば
僕にとってはこの上ない贅沢です
「不思議だな
和也と居ると…地位や名誉さえ不要に思えてくる
ささやかな幸せってこういう事を言うんだろうな」
生命はいつか、滅びる
それでも
その時が来るまで僕は
貴方の隣りで同じ夢を共に見ていたい
「愛してるよ、和也」
「僕も… 愛してる。翔…」
かりそめなどではない
その瞬間、瞬間を胸に刻みながら
黄金色に輝く満月を
永遠(とわ)に
共に
見上げながら…
❦『続・かりそめの遊艶楼』〜完〜❦