第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
マンションを出て車に乗り込むと
翔さんが何処かに電話をかけた
「もしもし? 櫻井だけど
10時に行くから貸し切りで宜しく。
…あぁ。悪いね。
じゃあそういう事で」
ものの数秒で終えられた電話
「よし…っと。 さぁ、行こうか」
「あの、貸し切りって…
先程のお電話はどちらにされていたのですか…?」
「皆への土産を買おうと思ってる店にだよ。
ゆっくり選べた方がいいだろ?」
翔さんはそう仰ってくださるけれど
本当は知っているんです
「ありがとうございます、翔さん…
なかなか外の世界に馴れなくて…ごめんなさい、」
「閉ざされた空間に何年も居たんだ
人目が怖いのは仕方ないよ
焦る事はない。ゆっくり…な?」
「はい、」
シートベルトを締めて車が走り出す
運転をしている翔さんの姿はとてもカッコ良くて
私服姿もとても素敵で
「俺の顔に何か付いてる?」
「えっ?!」
「だってさっきからずっと見てる」
「つい、見とれてしまって…」
「ははっ。光栄だな。
これから大通りに出るから、和也、俺の太腿に手を置いて?」
「こう、ですか?」
言われた通りにしてみる
「触れてた方が安心するだろ?」
翔さんは、凄い
僕の事を何でも知ってる
初夏の陽射しも、翔さんの優しさも
温かくてたまらない