第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
潤くんと別れて
俺はスーパーへと向かった
両手一杯に食材を買い込むと
足速にマンションへと急ぐ
「潤くん、喜んでくれるかな?」
手間がかかるから普段はあまり作らない和食だけど
俺は敢えて時間をかけて作りたかった
肉じゃがとほうれん草の胡麻和え
だし巻き卵にすまし汁
それから、きんぴらゴボウ
「俺、めっちゃ頑張ったー!!」
現在、PM 6:00
晩ご飯作るのに4時間もかかっちゃったよ…
テーブルセッティングをしていると
「雅紀さん、ただいま!」
玄関の方から潤くんの声が聞こえた
「お帰り、潤くん!」
「遅くなってごめ… うわっ、凄っ!
コレ全部雅紀さんが?!」
「へへっ、間に合ってよかった
着替えておいでよ? ご飯よそっとくから」
…と、その前に…」
チュッ
潤くんをそっと抱き寄せてキスをした
「めっちゃ美味しい!」
美味しいものなら食べ慣れてるはずなのに
俺の作った質素な和食を本当に美味しそうに食べてくれる
「俺の愛情入りだからね!」
「ふふっ、通りで」
潤くんといると
二人を包む空気全体が
穏やかで、優しくて…
潤くん、俺
次こそは
次こそは『ずっと』って願うから
だから、俺と…
「まただ」
「…へっ?!」
「また難しい顔してる」
「そ、そう?」
大きな瞳で見つめられると
本当の事を言ってしまいそうだ
俺が異世界から来た人間だなんて知ったら
潤くんはどう思うだろうか
「でもその表情も、好きだな
僕は雅紀さんの全部が好き」
「全部?」
「うん、全部
どんな雅紀さんでも
まるごと大好き」
「潤くんっ…!」
衝動的に
テーブルの上に置かれた潤くんの手を取った
離したくない
誰にも渡したくない
「順番逆になっちゃったけど、俺の…」
ちゃんと言わなきゃ
伝えなきゃ、俺の気持ち
「俺の、恋人になって欲しい」
一瞬、瞳を大きく見開いて
そしてニコッと笑って
「宜しくお願いします」
握り合った手を
潤くんがそっと包んでくれた