第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
腰を庇いながら
『簡単だし、すぐ出来るから』と
作ってもらった朝食を食べて
俺が洗い物をしてる間
潤くんはパリッとしたスーツ姿に着替えていて
昨日のあの艶っぽい潤くんとは打って変わって完全に仕事モード
デキる男、って感じ
なんか凄く…カッコイイな…
「雅紀さん?」
「へっ?! あ、潤くんスーツ似合うね!
めちゃくちゃカッコイイ」
へへっ、と微笑う潤くんは爽やかで
あー、モテるんだろうなぁ…
なんだか妬ける
「12時になったら、会社の前で待っててもらえますか?」
「うん、わかった」
他の社員さんも居るだろうに
いいのかな
「ね、コレ…」
連絡先くらい伝えといた方がいいだろうとスマホを取り出すと
「…コレは?」
「え、スマホだけど…」
「スマホ??」
そっか
この世界にはスマホが無いんだ
そう言えば家に電話もない
人と連絡を取り合う時、どうしてるんだろう?と不思議に思っていると
突然イヤモニのようなものを耳に嵌めて喋りだした
「あぁ、俺だ
そういう事は先に言ってくれよ
わかった…じゃあそういうことで」
あれ、なんか雰囲気違う…
「ごめんなさい、雅紀さん
下に迎え来てるって
もう行かなきゃ」
「あっ、そうなんだ
うん、わかった」
「歩いたって10分もかからないのに、もう…」
ちょっと不貞腐れた顔で
コートを羽織ってバッグを持つと
玄関に向かう
革靴を履くと振り返ってニコッと笑った
「行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
ホントは離れたくないけど
「仕事、頑張ってね!」
「会議に出て、ハンコ押すだけなんですけどね」
ふふっ、
なんだか俺、奥さんみたい
見つめ合うと自然と唇を重ねた
行ってらっしゃいのキスも
初めてだな…
ドアの扉が閉まるまで
俺は手を振って潤くんを見送った
さて、ランチの時間まで何しよう?
夕飯の材料はランチの後に買いに行くとして…
そうだ、洗濯!
あと掃除も!
洗濯機の中に洗濯物を放り込んでいると
昨日潤くんが着てたYシャツを見つけた
僅かに香る、潤くんの香り…
さっきまで一緒に居たのにもう会いたくなって
Yシャツを握りしめて潤くんの香りを取り込んだ
安心する、潤くんの香り…
大好き…