第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
“あなたの願いを叶えます”
飴玉本舗✡摩訶不思議堂…?
「なんだこれ」
いかにも怪し気な
紫色のチラシ
飴玉本舗ってことは
飴の専門店なのか?
に、しても
“あなたの願いを叶えます”って…
「飴なんかで願いが叶うくらいなら
いくらだって舐めてやるっつーの」
チラシをテーブルの脇に伏せて
俺はシャワーを浴びにバスルームへと向かった
「え…なんで…?」
シャワーを終えて部屋に戻ると
確かに裏返しておいたはずのチラシが表を向いている
なんだかちょっと薄気味悪いと思いながらも
もう一度そのチラシを手に取った
へぇ…24時間営業なんだ
チラシの右下に書かれている地図を見れば
家からそう遠くないらしい
ちょうどタバコを切らしてたとこだし
買いに行きがてら寄ってみるか…
俺はTシャツにスウェットの部屋着姿のまま
サンダルを引っかけてアパートを後にした
「ここ…だよね?」
ちょっとアンティークな造りの
赤レンガの小さな建物
看板は…見当たらないな
だけど確かに【営業中】の札がかかっている
恐る恐る小洒落た木製のドアを開けると
薄暗い店内に立派なショーケースが一つ
その中には
まるでガラス細工のような飴玉が
綺麗に色分けされてズラリと並んでいた
「ビー玉みたい…」
宝物を見付けた子供のように
ショーケースにへばり付いて食い入るように飴玉を見つめていると
背後にゾワッと人の気配がした
振り返るとそこには
まるでどこかの執事のような出で立ちの
初老の紳士が佇んでいた
「この店のオーナーの伊勢貝と申します
ようこそ、飴玉本舗✡摩訶不思議堂へ」
イセカイ、さん…?
え?
異世界?