第2章 バーチャルな君と僕
「…あのさ」
サトシ君が急に口を開く
「は、はい…」
「…僕が『サト』だって…なんで分かったの?」
言いながら、サトシ君が俯いてた顔を上げるから僕も同じように顔を上げた
「…それは、カラオケで…
写真のサトシ君を見掛けて…
でもそれはサトシ君じゃなくて…
受付やってたのが本当のサトシ君って知って…」
あれ…
もっとうまく言いたいのに、まとまらない
でも、それを聞いたサトシ君はなんとなく分かったみたいで
真顔から徐々にしゅんとした顔になっていった
「そうか…じゃあ…あの日店に来てたんだね…
僕達のやり取り、聞いてたんだね…
ごめんね、幻滅したでしょ…
だからか…
あの日からだもんね、メールの返事くれなくなったの…」
…メールの返事…
そういえば僕、全然パソコン開いてなくて…
そもそもメールが来てること自体、知らなかった
『和也、ご飯は?』
『…いらない』
『また部屋に篭って勉強?
ちょっとは息抜きも』
『うるさいな…ほっといてよ』
サトシ君が嘘をついてるって知って…
まさ君にキスされて…
あの日以来、僕はそれらを掻き消すように
勉強に集中したんだ
部屋でも学校でも
常に頭の中を文字で、数字で、歴史上の人物で埋め尽くして
パソコンは目につかないベッドの下に隠して…
友達とも、まさ君とも話さなくなった
けどそれでいいって、自分で納得して…