第2章 バーチャルな君と僕
❦智Side❦
次から次へとお客さんの対応に追われていて
気付けば潤と翔くんはもう帰ってしまっていた
「あー…見送りも出来なかったなぁ」
忙しさがだいぶ落ち着いてきたからか
『今日はもう上がっていいぞ』と
店長に肩を叩かれた
「いいんですか?」
「今日は忙しかったからな
特別だぞ!
あ、タイムカードは切るなよ?」
ありがとうございますと店長に頭を下げて
スタッフルームに入ろうとした時
― カラン カラン ―
また来客を告げるベルが鳴った
「いらっしゃいま… 翔くん!どうしたの?」
そこに立っていたのは
潤と一緒にとっくに帰ったはずの翔くんで
「良かったぁ〜
バイト上がっちゃってたらどうしようかと思った」
「今上がろうとしてたとこだよ
僕に何か用だった…?」
「少し話したいと思ってさ
近くで時間潰してタイミング見計らって来たんだ
智くん、この後って用事ある?」
「いや、無いけど…」
「良かったらお茶でもしない?」
「あぁ…… うん、」
今日はもうかずちゃんとのリアルタイムのメールは無理だな…
それも仕方ないか
僕は帰り支度の準備をして
翔くんと近くのファミレスに入った
「話って…?」
潤のことだろうか
いや、それは無いな…
「特に何がある、ってわけじゃなかったんだけど
智くんと二人っきりで話してみたいなって思ってさ」
「そう…なんだ、」
翔くんはニコニコして僕を見ていて
なんだかちょっぴり気まずい
オーダーしたパイナップルジュース、早く来ないかなぁ…