第2章 バーチャルな君と僕
「フリータイムで良かった?」
「うん、全然いいよ」
今日はネットのことをちょっと忘れて、現実を楽しもう
何歌おっかな…
「お疲れ、兄貴!」
離れてく受付から聞こえてきた声
それに振り返りはしなかったけど
兄貴って…さっきの眼鏡掛けた店員さんのことかな?
なんて
そんなの知ったところで…ってことを思ってたら
「こんばんは、智くん」
智くん…
聞き慣れた名前を耳が受けて
無意識に足が止まってしまった
「かず?…どうしたの?」
「え…あ、いや…」
何でもないって謝って、また歩みを再開する
…何、反応してんだ僕
"さとし"なんて名前、珍しくないし
どこででも聞く名前だ
まさか…僕とメールしてるサトシ君なわけ…
こんな近い距離にいるわけ…
…そうだよ、そんな偶然ないよ
自分に言い聞かせながらも確かめてみたくなって、受付に向かいそっと振り返った
「………え…?」
途端に、目に飛び込んできたその人
顔の整ったその人
それは間違いなく…
サトシ君だった
「いいの? なんだか申し訳ないよ
ありがとう、智くん。
ほら、潤もお礼言わないと!」
「えー、俺も?!」
え…おかしい
なんかおかしい…
「…かず?かず?」
「……あ、ごめん」
まさ君の呼び声で前に向き直すと
また止まっちゃってた足を少しずつ動かした