第1章 かりそめの遊艶楼
『あのっ、雅紀さん…!』
『うん…? どした…?』
『今度…花の苗を買いに連れて行ってくれませんか?』
『花の苗?』
『はい。
今、庭に咲いてるチューベローズ…
綺麗だけど、花言葉が良くないんです』
『あー…
慧も知ってたんだね』
『はい、』
『何か植えたい花があるの?』
『えっと…鈴蘭を、』
『鈴蘭か…
鈴蘭の花言葉は、何?』
『幸せの再来、です』
『幸せの再来…』
『奏月様や藍姫様のように…
皆が幸せになって此処から巣立って行って欲しいって、思って…』
『そっか…
でも、それは慧も同じだよ?』
『えっ…?』
『慧も、此処から巣立つ時は
幸せになってなきゃね?』
『僕は…
僕は雅紀さんが幸せなら
幸せですからっ…
それに…
出来ることなら僕もっ…
学校を卒業しても此処で…
雅紀さんの側で…仕事がしたい
ずっと…此処に居ても良いですか…?』
『…あぁ、いいよ。
ずっと…一緒に居ようか』