第13章 竜王申し
長い時間が過ぎた。
櫻井が握っていたことを話し終えると、松本は静かに帰っていった。
「智…すまねえ…」
男同士の愛なんて、俺にはわからねえ。
だが、愛する者が居るということは俺にだってわかる。
男ならそれを守りたいと思うし、人間として傍に居たいという気持ちもわかる。
智の気持ちも、松本たちの気持ちも…
どちらの気持ちもわかるから…俺にはこうすることしかできない…
「厄介なもんだよ…人間なんて…」
数日して、岡田から連絡があった。
成田は日本から出国していたが、今日戻るという。
ご丁寧に到着便まで教えてくれた。
すぐに成田空港に向う。
総長に連絡をしようかと思ったが、今日はツラを拝むだけだとしなかった。
空港に着くと、到着ロビーで成田を待った。
京成スカイライナーを利用するという話しだから、この導線に居れば間違いないだろう。
到着時刻を一時間以上過ぎても、成田は姿を表さなかった。
手荷物検査が混み合っているのだろう。
長期戦になるだろうと、その場を離れようとした瞬間、目の前に人が立っていた。
いつのまに…
それは成田だった。
画像で見たそのままの、無表情。
意思を感じない目。