第12章 What we want to protect～守りたいもの

｢あのままではユウラが死を迎えるのを待つだけだったのだぞ？シン。お前はそれでも良かったと言うのか？｣

──死を迎える──

｢...なにそれ。兄さん...何言ってんのさ。全然意味が分からないんだけど？まさか...｣

｢そうだ。...ユウラもまた、私と同じ運命を辿って、死に至る。｣

冗談なんかじゃない
兄さん...

｢いや、正確に言うのなら...いずれ。と言った方が正しいか｣

｢もう、ハッキリ言いなよ。今更もう何も驚かないしさ...｣

そう。失った後なんだから、全て今更だ...

｢カールハインツは全て悟っている。無論その運命を変える事は奴にとっては容易い事だろうが、いや...こうなる事も全て、手の内だったのかも知れんな。手紙に書いてあったのだ。このまま同じ時を過ごせば、ユウラもまた私と同じ病で命を落とすと｣

｢...まさか、あんなヤツの言う事を間に受けたワケ？それで、そうですか。じゃあ手放しますって？.....そんなの嘘かも知れないじゃないか！｣

そう威勢よく言ったものの、
オレは頭の中が真っ白になった。
兄さんの、ユウラに対しての想いの強さを感じたと共に、憎きカールハインツの力の強大さ...
そして自分の無力さが身にしみる
そう、兄さんがカールハインツに従ってしまう程に。

｢...。ならば逆に問うが、シン。お前ならどうしたのだ？私ではなく、お前が奴からの手紙を先に見ていたのなら｣

｢オレなら...｣

言葉に詰まる。
だって、きっと...兄さんと同じ決断をするって分かったから

｢そうだろう？シン。お前なら私の決断を理解してくれると思っていた。何故なら、お前の気持ちを分かっていたからだ。｣

｢ハハハｯ...もう何も言い返す言葉もないね｣

それ程にオレ達は、ユウラ...アイツの事が大切だったんだ。

少しの沈黙が続いた

それから、兄さんもオレも何も言う事が無くなり、少し咳き込んだ兄さんを横目で見ながら、部屋を出ていった────


自分の部屋に戻りながら思った

もう、二度とアイツの笑った顔も、怒った顔も、何もかも目にする事が出来ないのかと...

それがどれだけオレ達兄弟に影響が出るのか、そんなコトが頭の中でいっぱいになった