第11章 鬼さん、こちら。✔
「まだ乾ききってないけど。これで」
「……」
「よくは、なさそうだね…」
包帯を受け取ったものの、見るからに炭治郎の目は残念そう。
ええと…なんか、ごめん。
そんなに使用済み感ある包帯が欲しかったのかな…いや流石にそれは炭治郎相手であってもあげられないよ…気持ち的に。
「胡蝶に頼んで、新しい包帯を貰ってくるから。それで…」
「違うんだ」
慌てて包帯を取り上げれば、追い掛けた炭治郎の手が私の手首を捕まえた。
あれ、これ見覚えあるぞ昼間に。
「俺が欲しいのは…その、包帯じゃなくて」
「?」
言い難そうに口籠る炭治郎が、やがて決心したように顔を上げた。
「蛍の血が欲しいんだッ」
……はい?
「…炭治郎…いつから鬼になったの…」
「違…っそうじゃなくて、」
「それとも鬼の禰豆子の為に?」
「違うっ禰豆子は血は飲まないッ」
そうだよね。
睡眠で賄えるって言ってたもんね。
じゃなんで。
「その…これは、誰にも秘密にしておいて欲しいんだけど…」
余程他人には言えないことらしい。
小声で告げてくる炭治郎の顔が余りにも真剣で、断れる雰囲気なんて少しもなかった。
断る理由もないしね。
…血をあげるかは、わからないけど。
「蛍だから、話してもいいと思った。だから誰にも言わないでくれないか?」
「…わかった」
ひっそりと告げる炭治郎に、そっと耳を傾ける。
「この本部に来る前に、とある女性に出会ったんだ」
そこで、とても興味深い話を聞いた。