第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
「恰好いいよ。…杏寿郎に抱かれる度に、恋してる」
羞恥は残るものの、それ以上に心を埋め尽くすのは熱い想いだ。
頬に両手を添えて告げれば、見返す笑みがふやりと柔らかに深みを増す。
「俺はその瞳に映る俺自身を見る度に、心が捕らわれる」
「…私に?」
「君のすべてに」
それが幸福で堪らないという微笑みに、蛍もまた甘い吐息をひとつ。
下りてくる顔に、ふわりと金色の髪が肌をくすぐる。
抱き合い、触れる素肌が心地良い。
「…きもちいい」
自然と口をついて出たそれは、体を繋げることで得られる快感ではない。
体と心。
ふたりでひとつに混じり合う。
ただ触れ合っているだけで、心の奥深くまで繋がっているように思える。
快楽とはまた違う、気持ちよさだ。
「そうだな…叶うのならば、永遠にこうしていたいくらいだ」
「永遠に、はちょっと無理かなぁ」
「…む」
「だから、お互いの時間が取れる時はこうしていよう?」
「うむ?」
「杏寿郎が私にくれる時間の間は、こうして触れ合っていたい」
額を重ねて誓うように告げる。
肌に落ちる長い瞼を見つめて、杏寿郎はふくりと笑った。
「君は鬼でありながら、現実的だな」
「杏寿郎は人間だけど、夢を語ってくれるよね」
ゆっくりと開く瞼が、鮮やかな緋色を魅せる。
互いにくすりと笑い合う空気は心地良く穏やかなものだ。
それでもその瞳に映る自身を見つめて、嗚呼、と杏寿郎の胸に火が落ちる。
「蛍との未来だから、夢見るんだ」
「…っん」
重ね合う体に熱を灯して。
細い首筋に顔を埋め、甘い噛み跡で愛撫した。