第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
「君がよく知っている物だ」
舌にぺとりと張り付く薄い膜のようなもの。
それがなんなのか、唾液に濡れてすぐに気付いた。
「ん…んん」
「そうだ」
咀嚼すれば、くちゅりと粘り気が張り付く。
それは柚霧として身売りをしていた時に、よく使用していた通和散だった。
口内から退く指が、潤滑剤を作るようにと促してくる。
くちゅくちゅと卑猥な音が立つまで咀嚼をしていけば、顎を包むように撫でられた。
「舌を」
言葉数は少なくとも、何を求められているかは理解できる。
れ、と白い潤滑剤で濡れた舌を出せば、杏寿郎の指が挟むようにして拭い取っていく。
舌の裏側を指の腹で擦られるだけで、ひくりと喉が震えた。
早く欲しいとばかりに目で訴えれば、包み込むようにやんわりと抱きしめられる。
「そう急かさずとも、きちんとどちらも可愛がってやろう」
「あ"…ッ」
そのまま抱き上げられた体が、再び宙に浮く。
最初の挿入時と同様、背後から貫かれる体制に蛍は溜らず背後の温もりに縋った。
「は…ッ奥、入って、る…抜いて…ッ」
狭い後孔の中には、未だ太く硬い杏寿郎自身が埋められている状態だ。
体重がかかる体制では、強制的に深いところまで貫かれてしまう。
一度狭い扉をこじ開けられて、先程よりも亀頭が腸の奥を抵抗なく擦り上げてくる。
僅かに身動くだけで、全身に鳥肌が立つような刺激だ。
弱々しく頸を横に振れば、腰を支えるように太い腕が抱いてくれた。
「これなら少しは楽になるだろう?」
「ンッ…ぁ…」
にちゅり、くちゅりと卑猥な粘液が音を立てる。
蛍が唾液を混ぜて作った、通和散の名残だ。
耳にしているだけで体は熱くなる。
しかし肝心の刺激はどこにもこない。
欲を求めて、じんじんと下腹部が疼いた。
「杏…っ…前に、欲し…」
「知っている」
「ふ、アッ」
「ここにも欲しいものをあげよう」
耳朶を熱い吐息が掠めて、ふるりと肌が震えた。
それと同時に、待ち望んだ刺激が秘部を襲う。
太い亀頭が膣壁を押し広げるようにして、ぬぷりと挿入してくる。