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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし



 執拗な責めは、後孔も同じだった。
 杏寿郎の唾液でぐずぐずに蕩ける程濡らされて、何本もの指を咥え込まされる。
 それでも本来欲しい蜜壺へは、緩やかな愛撫しか続かない。


「っは…はー…ぁ…っ」


 荒い息でしか呼吸が繋げなくなり、目の前の畳を己の唾液で濡らす頃には、一段と夜空の闇は深みを増していた。


「ぁ…も…や、ぁ」


 どれ程時間が経ったのかもわからない。
 決して短くはない。時を刻む間に、すっかり後孔は杏寿郎の味を覚えてしまった。
 入口を優しく撫でられただけで、何かを期待するように充血した蕾がひくつく。


「お、ねが…も、頂戴…」


 はぁはぁと荒い息を零す合間に、蛍は切なげな声で懇願した。


「こんな、の…おかし…なる…」


 長いこと快楽に浸っているというのに、絶頂には一度も達していないのだ。
 とうの昔に限界だった。

 じっと見定めるように蛍を見下ろした杏寿郎が、触れるか触れないかの距離で肌を撫でる。
 それだけで赤く染まった肌はぴくんと震え、濡らした唇からは嬌声に似た吐息が零れる。


「ぁ…も…ッ」

「では、何が欲しいのか。しかと口にすることだ」

「ぇ…?」

「君の体は、誰のものだ?」

「っん…きょ、じゅろ…杏寿郎の、ものです…ッ」


 耳朶の縁を、爪先が象るように撫で上げていく。
 そんな些細な刺激も、ずくずくに熟した体には尚辛い。

 促されるまま、蛍は躊躇もせずに告げていた。


「私の、ぜんぶ…っあげる、から…杏寿郎を、ちょうだい…っ」

「俺の何が欲しい」

「杏寿郎の磨羅…っ」

「どこへ?」

「私のなか、に…っいれて…染めて、くださ…ッ」


 咽び泣くような懇願だった。
 幾度も告げる蛍の目は、杏寿郎しか見えていない。
 その色に染められることだけを欲して、快楽を求めている。
 理性や羞恥は置き去りにして。

 性には身軽に触れられる蛍だからこそ、理性も安易には崩さない。
 そんな蛍の何をもかなぐり捨てた姿に、杏寿郎の口角が深く上がる。


「上出来だ」

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