第24章 びゐどろの獣✔
(薄気味悪ィ色だ)
世間的には美しいものでも、実弥の目にはそうは映らなかった。
禍々しいものでも見るかのような鋭い目で、リボンを睨む。
「動くなよ」
「っ…」
抜刀した日輪刀の刃を、蛍の肌から背けるようにしてぴたりと当てる。
僅かに余裕のあるリボンと肌の隙間に刃を差し込んで、手首に力を入れた。
普通のリボンなら、特に力を入れなくてもぷつりと斬れるはずだ。
しかし実弥の手首に負荷がかかったのは、ぎちりと不自然に歯止めをかけてくる圧。
(…斬れねェ)
見た目はただの薄いリボンだ。
なのに日輪刀の刃で斬ることができなかった。
(流石、上弦の鬼の能力ってかァ)
日輪刀は鬼を斬る為に作られた刀だ。
それであっても斬れないということは、相当な実力の鬼となる。
「駄目だな。技を放つしか、引き裂く方法がねェ」
「技…ってことは、風の呼吸で?」
「ああ」
技を放つとなれば、リボンが巻かれているこの足首も無視はできない。
どう足掻いても、まとめて斬り刻んでしまう。
それが蛍にも伝わったのか。
強張る表情で、それでも蛍は頸を縦に振った。
「わかった。いいよ。元々これを取るには、足首を切断するしかないって思ってたし」
「それができなかったから俺に頼んだんじゃねェのか」
「自分じゃできないけど…不死川に斬られる覚悟なら、できる」
「何度も斬られかけたし」と茶化すように笑う蛍に、覇気はない。
鬼でありながら、痛いことも苦しいことも嫌いだと言った蛍だ。
人間のままの感覚を持っている彼女が、足を切断されることに抵抗を覚えないはずがない。
その蛍が、痛みを受け入れると言っているのだ。
それ以上何かを問うのは愚問だった。
「なら今夜だ」
「え、今夜?」
「やるなら早い方がいい。煉獄が寝静まった後、あの家を出ろ。いいなァ」
「その前に杏寿郎に見つかってしまう気がするんだけど…」
「お前、あいつの継子だろォが。目を盗むくらいできねェのか」
「弟子だから師匠を簡単に越えられないんでしょ。…でも、わかった。なんとかしてみる。勝手に出ていったら不審がられるから、理由を付けて部屋を出るよ」