第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔

　優しく傷つけないように、指の腹で小さな肉芽の皮を剥く。
　ぷくりと控えめながらも胸の花の芽のように主張する小さな突起を、そっと下からなぞり上げる。
　そんな些細な愛撫でも、びくりと柚霧の腰は艶まかしく跳ねるのだ。


「ぁっあッんく…ッ」


　ひと撫で、ふた撫で。
　通和散で濡れた指先でぬるぬるとなぞり続ければ、徐々に柚霧の声は高く艶がかかった。


「どうだ、柚霧。痛みはまだ残っているか？」

「はッぁ、わから、な…ぁッそれ、きもち…ッひゃぅ…！」

「愛いなぁ」


　充血した肉芽を優しく摘まんで擦り上げれば、白い腰が浮く。
　後孔から抜け出そうになる陰茎に、細い腰を抱き押さえて杏寿郎はふくりと笑みを深めた。

　たった数本の指先の愛撫だけで、全身に快楽を走らせる柚霧が愛おしくて堪らない。
　ここまで彼女の性感帯を引き出せるのは自分だけだと、誰にともなく見せつけるように。


「その声も、その体も、全部俺のものだ。汗粒一つだって誰にもやらない」


　赤い耳に、言霊のように囁いて。
　舌を捻じ込み、唇で甘く噛み付いた。


「ふァ…ッあ、んッ杏寿郎、さ…っ」


　そうすれば尚、愛らしい姿を見せてくれることを知っている。

　ぴくんぴくんと小刻みに快楽の波に乗る様が、愛おしさと同時に杏寿郎の欲を煽る。
　様子を探るように、ゆっくりと腰を尚のこと密着させるように押し付ければ、柚霧の声が萎んだ。


「んぅ…っ」


　くぐもるような声。
　悲鳴ではない。


「っ…これ以上、動きはしない。ただもう少し、柚霧の中に入り込みたい」

「ん…っ大丈夫、です」


　蕩けるような熱い吐息を、耳元で零す。
　そんな杏寿郎が欲に耐え続けていることを、柚霧も十分知っていた。


「こうして、体全体で杏寿郎さんを感じていられると、安心しますから…」


　背中に感じる体温は、包み込まれているような安心感を覚える。
　求められるままに、この人のものになりたいと鼓動は速まる。
　すると異物であるはずの、後孔に埋まる熱が愛おしいものに思えてくるのだ。


「だから、大丈夫です。さっきよりも、痛くありません」

「本当か？」

「はい」