第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
果実のように丸みを帯びた傾斜を唇で撫でながら、乳房の下や胸の間にも花弁を散らしていく。
「は、ん」
ぴんと立った胸の突起に、唇は触れそうで触れない。
突起近くの肌もきつく吸い上げれば、細い指が杏寿郎の肩を縋るように掴んだ。
「杏寿郎、さん」
「ん?」
「そこに、は…触れて、下さらないんですか…」
花弁を散らすだけではない。
口付けながら舌先で形を辿るように乳房の輪郭や、柔らかな丘を愛撫していく。
唾液で濡れた肌は外気の空気に震え、期待を込める。
それでも知ったところに知った快感はこない。
その他の所には、これでもかと丁寧に愛撫をくれるというのに。
期待を込めて待ち詫(わ)びる胸の花の芽には、触れてもらえないのだ。
「言っただろう? まだまだだと。俺はまだ、柚霧の体を味わい尽くしてない」
「そんなことは…んっ」
「そら。ここにだってまだ触れてないぞ」
「あっ…そこ、はっ」
太い指先が胸の横を辿り、ぐいと腕を頭上に押し付ける。
露わになった無防備な脇に口付けられると、びくりと柚霧の体が跳ねた。
「汗を掻いて汚いですからっ」
「感じてくれている証だろう? 汚くなどあるものか」
優しくも途絶えることのない唇の愛撫により、しとりと濡れた脇の下からは発情した濃い匂いがする。
顔を埋めて汗を舌で拭い取るように、ぴちゃぴちゃと音を立てて杏寿郎は味わった。
「ふ…っぁ、く…」
その度に上がる柚霧の声に、色が増す。
杏寿郎の脚の間に閉じ込められていた細い両脚が、もどかしげに擦り合わさった。
舌鼓をうちながら上目に見れば、柚霧の顔は赤く染まり悩ましげに眉を寄せている。
自ら胸を晒した時でさえ、そんな羞恥心は見せなかったというのに。
柚霧の抱かれる女としての顔を初めて見た気がして、どくりと下半身に熱が集うのを感じた。
「善さそうだな?」
「っわかりません…」
「そうか?」
「そんな、ところ、舐められたことなんて…」
「そうか」
悩ましげな柚霧の言葉は、思いもかけず杏寿郎には活力剤となった。
爛と目を光らせると、唾液で濡れそぼった脇の薄い皮膚に、強く吸い付き花弁を残す。
「ひぁっ」