第22章 花いちもんめ✔
「でも大丈夫。何かあれば俺が傍で守ってあげるから。なんなら美味しいご馳走だって用意してあげられるよ」
「そ、そんなの必要ない。私は大丈夫だからっいい加減下ろして…ッ」
同情の瞳で微笑まれると、ぞわりと鳥肌が立つ。
いつまでも下ろそうとしない童磨に少女らしからぬ力で押し返すも、びくともしない。
咄嗟に上へと視線を上げれば、屋根の上にいるはずの天元の姿を見つけられなかった。
(何処に──)
「何か気になるものでもあるのかい?」
「っ!」
僅かな視線の動きにも、不自然さを見透かされた。
殺気一つ滲ませず朗らかな空気を纏っている童磨だが、これは上弦の鬼なのだ。
動揺と緊張で身を固くする蛍に、心配しないでと大きな手が優しく背を擦る。
「大丈夫だよ。痛いことなんてしないからね。君は人間じゃないんだから。気の毒な思いなんてしなくていいんだ」
(気の毒?)
一体何を言っているのか。
わからないが否定もできず、強く拳を握るだけの小さな手を、そっと童磨の手が包み込んだ。
「だから俺と、愉(たの)しいことをしよう?」