第3章 カコトカレシ
カランッ
「いらっしゃいませ。」
「クラリネットありますか?」
「すみません、ちょうどさっき売れてしまって。」
「そうですか・・・。」
無いなら仕方ないか・・・、
「譲ろうか?」
「えっ?!」
その声の主は私の後ろにいるらしく、
振り向くと私より15㎝ほど高い影がそこには
あった。
「あぁ、いきなりごめん。」
「いえ、・・・別に。」
「実は、クラリネット買ったの俺で別に
いらないから・・・。」
いらないなら何故買ったんだろう、この人。
「君に譲ろうと思って。」
「まぁそれは、ありがたいですけど・・・
大丈夫なんですか?」
「うん、俺はもともとテナーサックスだし。」
「そうなんですか、じゃあおいくらですか?」
「いいよお金なんて。」
「でも・・・。」
「その代り、うちの吹奏楽に入ってくれない?」
「えっ?」
「君、華奏中学の生徒だよね?」
「はい。」
「もともと部に寄付しようと買ったヤツだから。」
「あ、はいっ!絶対入ります。」
「部員一人ゲットッ!」
これが彼との出会いだった。