第43章 寝坊と、コーヒーと、それから。
電車に揺られ、数十分。
最寄駅に着き、改札を抜けるとリエーフは手を差し伸べてくる。
その手に自分の手を重ねると絡めるようにしてぎゅっと手をつなぐ。
「へへーっ!」
『どうしたの?リエーフ?』
「美優さんの手あったかいなーって。」
『リエーフの手は冷たいね?』
冷え切った指先を温めるようにリエーフは私の手ごと自分のポケットに入れる。
「これであったかい。」
にかりと笑うリエーフは私のスピードに合わせてゆっくり歩く。
『荷物重たくない?』
「大丈夫っすよ?これくらい。」
『家帰ったらバウムクーヘン食べようね?リエーフはココアにする?紅茶?』
そう問いかけるとリエーフは少し悩んでから私の方を向いた。
「今日はカフェオレで。」
『珍しいね?リエーフがコーヒー選ぶなんて。』
私がリエーフに聞けば私を見ながら苦笑い。
「美優さんと同じ味がいいなって。俺、ブラックは飲めないから、牛乳で割れば大丈夫かなって…」
嬉しくてくすりと笑えばリエーフは少ふてくされたような顔。
「美優さんひどい…」
『違う違う!ブラック飲めないのに笑ったんじゃなくて!
同じ味で食べようって思ってくれることが嬉しくて笑ったの。』
そう伝えればリエーフも嬉しそうに笑う。
「早く帰りましょう?」
リエーフに急かされながら私達は家までの道を少しだけ急いだ。