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あいつはねこまのわんこ系少年【HQ】

第4章 過去のトラウマ



ある程度の家庭の事情がわかり始めても両親のことは尊敬はしていた。でもこの時から、一切尊敬することをやめた。

一切言うことを聞かなくなった私のことで両親は罵り合いをすることが増えていった。
あの子が反抗するのはお前が悪い。
お前のせいだ。
そんな言い争いにも飽きたのだろう。両親は前にも増して家に帰ってくる頻度が減った。

子供ながらに信じていたはずの両親。
期待の気持ちがなくなった時のあの『目』が
怖い。

またこうなるんじゃないか。
失望させてしまうのではないか。
そう思うからなのか、人付き合いが怖くなった。
周りとは一線引いて付き合うようになった。

だから高校は知り合いが受験しない音駒を選んだ。
人を知らなければ関わらない。
深く交わらなければ遠ざけられない。

裏切られることもない。

私は、そうやって過ごしてきた。

それなのにリエーフはずかずかと心の中に入ってくる。
確かにリエーフのことは好き。
でも、人付き合いをあまりしてこなかったから明るく包み込むような優しさに心がびっくりしているだけなのかもしれない。

これは、恋ではないのかもしれない。
でも、恋かもしれない。

洗い物を終え、部屋に戻る。
ふと、目の端にちらついたのは、あの日リエーフに買ってもらったフレグランス。机の上に置いている水色のスプレーのボトルを持ち、一度宙にひと吹きする。

ふわりと香るリエーフの香りに沈み込んでいた気持ちが少しだけ浮上する。

明日はレギュラー入りのお祝いにリエーフの好きなおいなりさんでも作ってあげよう。

そう思い立つと私は明日のお弁当の仕込みをするために再びキッチンに戻ったのだった。
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