第36章 ネコとヘビ〜春高代表決定戦2試合目〜
ざわり
会場がやけに騒がしくなる。
リエーフから目を離せば一気に会場が見えてくる。
足を引きずるやっくん。
走り寄る猫又監督と山本。
ぞくり
先ほどとは違う。
寒気のような感覚。
それと
頭が真っ白になる感覚。
「スンマセン‼︎」
やっくんがフェンスの向こうにいた観客に謝っていた。
振り返りコートに戻ろうと右足を着く。
やっくんの顔が痛みで歪んだ。
慌てて直井コーチと犬岡が支えに入る。
猫又監督は芝山の顔を見る。
緊張が走る芝山の顔。
ざわざわと騒がしくなる会場。
まるで映像を一部分ずつ切り取ってみているようだ。
やっくんは犬岡と直井コーチに支えられたままベンチに戻る途中、クロと海くんに声をかけてる。
2人に謝ってる…
やっくんが悪いんじゃないのに…
ベンチに去っていくやっくんの背中を見つめるクロと海くん。
その顔からは笑みが消えていた。
苦しそうな顔でやっくんを見つめるみんな。
パンッ
クロが手を叩く。
真剣な目をしながら口元はにやりと笑う。
みんなに何かを伝えると、みんなは縦に首を振る。
やっくんが抜けた状態で、試合は再開された。