第35章 ねことふくろう〜代表決定戦1試合目〜
コートを見れば自分のスパイクをレシーブされたからか木兎がやっくんを見ている。
でも、木兎は笑っていた。
ボールを取られたことを悔しがっているんじゃない。
どうすれば気持ち良いスパイクを打てるだろう。
ただそれだけ。
きっとそうだ。
木兎の瞳が琥珀色に輝いているのが観客席からでもわかった。
気持ち良いスパイクを打つため、木兎率いる梟谷はどんどん攻撃を仕掛けてくる。
対して音駒も守り強化で凌ぐがリードしているのは梟谷。
木兎のキレキレのストレートがブロックの隙間を縫ってけんまに当たる。
打ち上げようと構えていたが木兎のスパイクの威力が強すぎてボールは外に跳ね、けんまは床に転がった。
『けんまっ!』
叫んでしまうが梟谷からの賞賛の声で私の声はかき消えてしまった。
どんどん点差は広がっていく。
「ああーん!あかねちゃん、美優ちゃん、どうしよう…負けちゃうよ…!」
心配そうなアリサさんとは対照的にあかねちゃんは落ち着いている。
「音駒はいつも最初、リードされてばっかりなの。」
「ええー!」
そう。
今は「脳が正常に働くため」に「酸素」を回している最中。
不思議そうな顔をしているアリサさん。
そんな中、音駒がタイムアウトをとった。
コートからみんながいなくなる中ネット越しにけんまと赤葦が話をしている…みたい。
気のせいか、この2人には珍しく火花が散ってるように見える…
なに話したんだろう…