第2章 これはデートじゃない。買い出しだ。
駅前で送る送らないの押し問答を繰り返したが、リエーフの純粋な瞳に負けて、私は家まで荷物持ちをお願いした。
自宅マンションの入り口まで案内すればリエーフは驚き目を瞬かせた。
「ここっすか…?」
最寄り駅から数十分、セキュリティバッチリのそこそこおっきなマンション。
それが私の家。…いや、親の持ち家。
家の大きさに戸惑いを隠せないリエーフの手を握り返すとリエーフに声をかけた。
『どうする?寄ってく?どうせ両親いないし。』
「いや、荷物置いたら帰ります…」
『ご飯…作るから食べてって?荷物持ってくれたお礼。』
「…いいんですか?」
『うん。寄って行って?』
戸惑いながらどうしようか悩むリエーフ。
悩んで悩んで、リエーフは顔を上げ、私の顔を見た。
「いや、やめときます!あと、これ、俺部活の時に持っていきます!」
そう言い、リエーフは備品をまとめた袋を持ち、帰ろうとする。
繋いだ手を軽く引き寄せ顔を覗き込むと、リエーフは困ったようににこりと笑い、私の前髪をかきあげ、
ちゅっ
おでこに口付けた。
『え?ちょ…りえ?』
「家行ったらこれ以上のことしちゃいそうなので!」
何が起こったかわからずに目を瞬かせる私をその場に置き去りにしリエーフは私の前から走り去った。
これ以上…
キスの先…
少し想像して、赤面。想像したことを頭からうち消すかのように頭を振る。
相手は立派な高校生男子。大型犬のような彼だって、人並みに性欲は持ち合わせているだろう。
…でもそれに応える気は、私にはない。
リエーフが走り去った方向から目を離すと、私は自分の荷物を持ちマンションのドアを潜ったのだった。