第2章 これはデートじゃない。買い出しだ。
今日は5月だっていうのに暑い。
今日の私の服装は白のレースのオフショルダーのブラウスにデニムのキュロット。
白いレースの足首までのソックスに黒の足首にストラップが付いたタイプのパンプス。
髪の毛はうなじあたりからくるくるねじってヘアクリップで留めた簡単ポニーテール。
動くのに邪魔にならないように鞄は革の小さめのショルダーバッグにした。
隣を歩くリエーフに気づかれないように彼を盗み見る。
一方のリエーフはと言うと、白のVネックにダークグレーのパーカー。カモフラ柄のパンツにハイカットのネイビーのスニーカー。
ドラム型の鞄を背負っている。
1つ1つはシンプルなのにどうしてこんなに格好良く見えるんでしょう。
そうか、元がイケメンだからか。
イケメン滅びろ。
なんてもやもやしていたからか、リエーフと繋いでいた手に力が入っていたらしい。痛いっ!とリエーフが非難の声をあげたので私は慌てて手の力を抜いた。
『あっ!ごめん。ちょっと怒りが…』
「何すか⁉︎俺、もしかして美優さん怒らせることしました⁈」
『いや…ただの嫉妬だから気にしないで?』
「嫉妬?」
不思議そうに首をかしげるリエーフに、私は苦笑いをしながら答えた。
『リエーフはカッコ良くて羨ましいなぁって。私自分に自信ないから…』
可愛くないし、体のバランスも悪い。
だから服を着る時には色々悩む。
太って見えないかな、とか。
実は今日の服装も昨日の夜クローゼットの中の服を片っ端からひっぱりだして決めた。
自分の自信のなさを服で包み隠している。
落ち込んだ気持ちを救うようにリエーフの唇が動く。
「何言ってるんですか、美優さん可愛いですよ?」
リエーフは言ってくれるけれどこれはきっとお世辞…
自分があんまり可愛くないことは自分が1番知ってる。
横に首を振ると先ほど強く握った手をそっと撫でる。
『私より可愛い子なんていっぱいいるよ。でも、ありがとうね?』
するとリエーフは拗ねたような顔をする。
「美優さん、可愛いのに…」
『はいはい。行くよ?』
私はリエーフから紡がれる"かわいい"を聞かないように、繋いだ手を引っ張るようにして走り出した。