第20章 夏休みは始まったばかり!
電話の主は電話が掛かってくるのがわかっていたかのようにすぐに電話に出た。
「ハイ、なんですか?美優さん。」
『なんですかって…なんなの、あのメッセージ…』
「え、いけなかったですか?”今から2人でお楽しみですか?”って送って。」
『違うわよ…ってかなんつーこと言ってくるのよ…蛍。』
そう、電話の主は蛍。
「明日から2人きりじゃないから今日は激しく『ちょっ!ばかけい!』
「まぁ、冗談ですけど。」
蛍さん。淡々とした口調だから冗談に聞こえないんですが。
『明日、8時30分に大宮駅だっけ?新幹線。』
「そうですよ。迎えに来てくれるんですよね?美優さん。」
『新幹線降りたら教えて?改札向かうから。』
「わかりました。明日、楽しみにしてますね?美優さんのみ『ネタバラシ禁止。読者様にはまだ教えてないんだから』
「それ、どういう…『蛍には関係ない話。』
そう、ここでネタバラシしたら、面白くない、…と思う。
「…まぁいいです。」
ふうと息を吐くと、蛍はいつもより低い声で呟いた。
「明日、油断しないでくださいね?僕、美優さん襲っちゃうかも…」
『…ばかけいっ!もう知らない!おやすみ!』
「明日寝坊しないでくださいね?」
こちらから一方的に電話を切る。脱衣所から出れば、ドアの開く音を聞きつけリエーフがこちらに向かってきた。
「みーゆさん!そろそろ寝ましょう?」
『そうだね?』
私の部屋に入ると、リエーフは私のベッドに座り、私の方に手を伸ばす。伸ばされた手の間、リエーフの足の間に座るとそっと髪を梳かれる。
「明日、楽しみっすね。」
『だね?』
リエーフの胸板に耳を当てる。
とくん、とくんと心臓の音が聞こえる。
その音が心地よくて、私はいつの間にかリエーフの胸の中で深い眠りに落ちていた。
「おやすみ、美優さん…」