第18章 家に着くまでが合宿です。
ゆさゆさと肩を揺すられている。
何、眠いんだから寝かせてよ。なんで起こすの。
「美優さん、美優さん?」
リエーフの声まで聞こえるし…でも夢の中までリエーフ出てくるなんて幸せ…
いや、何かおかしい。
重たい瞼をこじ開ければ目の前にはエメラルドグリーンの瞳。
「美優さん、着きましたよ?」
『リエ…フ、おはよ。』
「美優さん寝ぼけてますね?とりあえずバスから出ますよ?」
まどろみから抜けきれない私はリエーフに向かって手を伸ばす。
『だっこ…』
リエーフはしょうがないですねって呟きながら私の鞄を持ち、お姫様抱っこをしてくれる。らしい。眠くてよくわかんない…丁度耳元から聞こえるリエーフの心臓の音が心地よい。
「リエーフ…美優甘やかしてんじゃねぇ…美優起きろ。このあとミーティングあるんだぞ。」
突然クロの声がしたと思ったら指で鼻をつままれた。
『いひゃい!』
「起きたか?体育館行くぞ。ミーティング。」
『う…わかった…リエーフありがとね?降りる。』
クロのおかげですっかり眠気が覚めてしまった私はリエーフから降りようとしたが、リエーフは一向に下ろしてくれない。それどころか、そのまま体育館に運ばれていく。
『リエーフ?』
私が声をかけた瞬間、リエーフは私の顔を見、笑顔で言った。
「灰羽リエーフ、いっきまーす!」
リエーフは私を抱いたまま走り始める。
速い。むっちゃ速い。
咄嗟に首にしがみつく。
『ちょっ!りえっふ!はやっ!』
「舌噛まないように気をつけてくださいね。」
『おっおろしてぇぇえぇぇえ‼︎‼︎‼︎』
恐怖で叫び声をあげながら体育館に着いた頃にはリエーフ元気、私が疲労困憊。私だっこされてただけなのに…
「おー来たか…ってお前ら…」
『リエーフ…離して、くれない…』
外から体育館に直接降ろされると、そのまま床に倒れこむ。その間に靴を脱いだリエーフはさも当たり前のように床に倒れ込む私を抱き抱え、集合の輪の中に入る。
「美優…なんかお前、リエーフにやられっぱなしだな…」
『私歩けるのに…やっくん助けてよ…』
「リエーフに関わるの面倒くさい。」
『やっくんひどい…』
「ほら、ミーティング始めんぞー。」
リエーフは始終笑顔、他の人は苦笑いで合宿の反省会と称したミーティングが始まった。