第15章 夏合宿5日目。
みんな食事が終わり、あとは私のプリン待ち。やっぱり甘いものはいいなぁ…
『なに…?』
みんなこっち見てる…はあ、とため息をついた赤葦がぽつり、と呟いた。
「いや、幸せそうに食べるなぁと…」
『だって美味しいもん。』
「俺もー!」
そう、大きく口を開けるリエーフ。こうなるとリエーフ食べさせるまで引かないんだよなぁ…スプーンでプリンを掬うとリエーフの口に運ぶ。
『はいどーぞ。』
リエーフはぱくりとスプーンに乗ったプリンを幸せそうに食べる。
見てるこっちまで幸せになる。
周りに人がいなければね。
『……なによ。』
「本当お前ら周り気にしねーよなー。」
ため息まじりにクロが私たちを茶化す。
『周り気にするんだったらリエーフと付き合えません。毎日朝練終わりにまっすぐ3年の教室に来るんだよ?目立ってしょうがない。』
「毎日…なにやってるんですか。」
呆れた声で蛍が問えば、すかさずリエーフが答える。
「え?朝飯もらってる。」
「「「は?」」」
状況を飲み込めないクロ以外のみんな。
『朝練後に目の前でお腹ぐーぐー鳴らされたら作らざるを得ないよ…』
「餌付け…」
「ですね…」
「羨ましい。」
「俺なんて母ちゃん特製おにぎりDXなのに。」
翔陽のおにぎりDX…気になる。
「毎日毎日教室に行くたびにこいつがいるんだぜ。勘弁してほしいわ。」
『じゃあギリギリまで部室にいれば?』
わざとらしく呟くクロに反論すれば、クロはがたりと椅子を鳴らす。
「うわひっでえ!一応俺の教室!それもこいつ使ってる椅子、俺の!」
『いーじゃない。リエーフが来る頃は空いてるんだもん。』
「すいません…そろそろおばちゃんたちの目が怖いです。」
よくよく見るとおばちゃんたちが目を光らせている。
「じゃあ片付けて風呂入ったら集まんね?」
「お!いーじゃん!」
『おいそこの部長達、率先して規律を破るんじゃないっての。』
「楽しそーじゃないっすか!」
「じゃあさっさとやるぞー!ここにいるやつ強制参加だからな?」
「なんで僕まで…」
「諦めな…月島。この人達いつもこうだから。」
みんなは素早く立ち上がり食器を片付けはじめる。
こういう時の団結力は強いんだよねぇ。
夜はまだまだ始まったばかり……らしい。