第14章 夏合宿4日目、夜。
手早くお風呂を洗いスマホで時間を確認すると消灯まで残りはわずか。
急がなきゃ…
お風呂の道具を持ち、お風呂場のドアを開ける。
「美優さん!」
私を呼ぶ声に顔を上げるとお風呂上がりのリエーフ。
『もうすぐ消灯だよ?どうしたの?』
驚き、駆け寄るとリエーフはにっこりと笑い私の頬を撫でる。
「言いたいことあって待ってました。さっき…無理させちゃったかなって思って。」
その言葉に少し動揺する。揺れた瞳を気づかれないように私は少しだけテンションをあげて笑う。
『そんなことないよ。大丈夫。』
「大丈夫って顔してないです。」
ハッとしてリエーフを見れば真剣な顔で私を見てる。
「嫌だったら言ってください。無理なら殴ってでも止めてください。」
優しく手を握られる。いつの間にか震えていたらしい自分の手はリエーフのおっきな手に包まれ震えを止めた。
『怖い…とか、嫌だって言って、リエーフ嫌いにならない?』
さっきは怖くて言えなかった。
リエーフが私に触れる手が、唇が、全部が優しいのがわかっていたから。
「嫌いませんよ?」
私の手を握る力が少しだけ強くなり私は顔を上げる。
「だって、俺は他の誰とでもなく美優さんといろんなこと経験したい。だから、美優さんが嫌だったらいつまでも待ちます。」
『私から離れていかない?』
「離れないですし、むしろずっと一緒に居たいです。美優さんから離れる気なんてありませんよ」
涙ぐむ瞳。気づかれないように目を伏せるが意味を成さず頬を流れる。
『リエーフ…ギュってして?』
私が呟くと、リエーフは大きな体で私を包む。さっきまでの胸のモヤモヤは少しだけ消えたような気がする。
でもやっぱり怖さは拭い去れない。本音が話せるようになったらもっと何かが変わるような気がする。
だから、待ってて、リエーフ。
そう思いながら私は開けていた目を閉じ、リエーフの体に身を任せた。