第13章 夏合宿4日目。
戸惑いながら見つめる瞳は柔らかい。
『リエーフ…怒らないの?』
昨日…怒ったから今日も怒るのかと…
「チューされたのはむかつく。」
リエーフは一度ぎゅっと強めの力で私を抱きしめたあと、力を緩め私を解放する。
「でも…美優さんが好きなのは誰?」
包み込むような優しい声。
そんなの考えなくてもわかる。
『リエーフ…』
「チューしたいのは?」
『リエーフ』
「だったらいーや!」
にこにこ笑ってくれるだけで安心する。
ちゃんと気づいてくれる。
不安も吹き飛ばしてくれる。
そんなリエーフが
『好き…だよ?』
口から溢れた本音。そのまま私とリエーフの距離は近くなり、唇が触れる
前に怒号が聞こえた。
「ゴラァァァアァア!リエェエェェェフゥ‼︎‼︎‼︎どんだけ長い便所だぁぁぁあ‼︎堂々とさぼってんじゃねぇぞぉぉお‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
『あ、やっくん…』
触れる前に聞こえた怒号に、残念そうに体は離れていく。
「夜久さん…空気読んで…じゃあいきますね?」
リエーフは私から離れるとニコッと笑い一瞬だけ唇にキスを落とす。
「続きは練習のあとで!」
そういうとウインクを飛ばしながらばたばたと足音を立ててリエーフは走り去っていった。
と思ったらやっくんの怒鳴り声とリエーフの痛がる声。
蹴られたか?
聞こえる物音だけで思わず笑みが溢れる。
リエーフががんばってる姿を見に行こう。
そう思うと私は目の前に残る洗い物を手早く片付け始めた。