第11章 月夜に啼く烏の声は
「いってぇぇぇぇええ!何するんすか!美優さん‼︎」
背中に当たる蹴り。リエーフの叫び声とともに蛍はリエーフから解放され後ろに数歩よろめく。
『やめてって言っても聞かないリエーフが悪い!』
「だって月島、美優さんにチューしたんだよ!俺だってまだなのに!」
「あれ、まだだったんだ。」
『蛍ニヤニヤしない。リエーフうるさい。』
私はため息をつくとリエーフに向き合う。
『あれ、キスに見えるように顔近づけてるだけだからね?』
「本当にしても良かったけどね?」
『蛍も回し蹴り食らいたい?』
私が笑顔で足を上げると蛍は降参のポーズをとり、2、3歩後ずさる。
「じゃあ僕、お邪魔だろうし部屋に戻りますね。」
そう言い蛍は部屋に向かって歩を進める。
「あ、そうだ。」
蛍はおもむろに振り返るとニヤリと笑いながらとんでもない言葉を残していった。
「下着は上下揃えたほうがいいと思いますよ?そっちの方が男ウケしますし。」
『合宿だから装飾少なめのやつにしてるの!って蛍!』
「なんで月島が美優さんの下着知ってるんですか⁉︎あいつと何があったんですか⁉︎」
「背中のキスマーク早く消えればいいデスね?おやすみなさい。」
『蛍のばかっ!』
「美優さん‼︎背中のキスマークって⁉︎」
『リエーフちょっと待って!もう!なんなのよっ!蛍!』
「ああ、さっきの”質問”。連絡待ってますね?」
「美優さん⁉︎」
『もううるさぁぁぁぁぁあい‼︎』
蛍の爆弾発言によりリエーフが騒ぎ出す。その隙に部屋に帰って行く蛍の背中をリエーフごしに私は見つめた。
「少しくらい引っ掻き回させてよ…くそっ」
帰り際、蛍が廊下で呟いた声は誰にも聞かれることなく静かに消えていった。