第10章 夏合宿3日目。
「美優さんお米食べましょうよ?米!こっち来てから食べてるの麺類ばっかりですよ?」
1番この場で米という言葉が似合わないリエーフがそう言い私に向かって何かを差し出す。おいなりさんだ。
『リエーフおいなりさん好きでしょ、食べなよ?』
そう言って自分の食事を食べようとした時だった。
「はい!あーん!」
その声を聞いて私は条件反射で口を開ける。その隙にリエーフは私の口においなりさんを放り込んだ。咀嚼すると口いっぱいにおいなりさんの味が広がる。
『リエーフありがと…』
「お礼はチューでいーっすよ?」
『…ばか……』
「いい感じのところすいません…免疫ない日向が固まったんでそろそろ戻ってきてくれませんか?」
赤葦に声をかけられ現実に戻る。周りを見ればニヤニヤ顔と冷静な顔。そして真っ赤になって固まっている顔がある。
「本当ラブラブだなぁ。見せつけんなってー。」
クロが茶化すと木兎が興味津々とばかりに話に加わる。
「何々?2人付き合ってんの?」
「付き合ってること知らない人まだいたんですか?端から見てバレバレですよ?」
はぁとため息をついたのは蛍。
「ちゅっちゅっ…ちゅー…」
あ、顔を真っ赤にさせた翔陽の動きが止まった。
「うわっチビちゃんがショートした。」
「どんだけ初心なんだか。」
『…なんかすいません。つい条件反射で…』
そう謝るとみんなが苦笑いしながら私達を見る。
「条件反射って…お前ら。」
『引かないで…』
だってリエーフ、美味しいものはみんなでって感じの考えらしくて、よく一口くれるからつい…この後、食事が終わるまで私たちは散々にからかわれ、食事を食べ終わる頃にはヘロヘロになっていた。
だから私は気づかなかった。
"あいつ"がテーブルの下で痛いくらいに拳を握っていたことに。