第10章 夏合宿3日目。
そういえばちょっとだけ気になることがあった。
今日の多分午前の試合。音駒が試合待機してた時に隣のコートで行われていた梟谷と烏野の試合。
今日も木兎が何度もスパイクを決めていた。
確か、試合中盤くらい…烏野がタイムをとった後だったかな?赤葦がトスを上げて木兎がスパイクを打とうとした時。
木兎の表情が変わった。
目の前には蛍のブロック。
ぞわりと鳥肌が立つような空気。
怯えたような恐怖を孕んだような木兎の瞳。
気圧されて打てなかったスパイクは木兎の手からふわりと離れて床に落ちた。
その空気に気づいたのは、ごく少数。
『今の…』
「美優も気づいたか…?』
思わず出た言葉を拾ったらしく、いつの間にか近くに来ていたクロが試合中のコートを見ながら私に話しかけてくる。
『クロ…』
「あれは厄介なシロモノになるぜ…」
そんなクロの言葉を聞きながら私はコートを見つめる。
木兎の悔しそうな、それでいて敵が増えることが嬉しくてたまらない。そんな表情。
そして飄々とした蛍の顔。
少しずつ何かが変わり始めてる気がして、緩む口元を手で覆った。