第5章 桜が咲いた。
「スガ、言えたのか?」
帰りの車の中で大地が唐突に聞いてくる。
「あぁ、なんか今日月島と夏乃さんみて、吹っ切れた。」
「そうか。」
「俺は優しい優しいこうしおじちゃんになって月島より先に桜ちゃんに「けっこんするー」って言わせるんだ。」
「お前…吹っ切れたんじゃなかったのか…」
大地は苦笑いを浮かべている。
「そんくらいいーべ。で、バレー教えてセッターにする。」
バレーという単語で後ろでワイワイ話をしていた後輩たちが話に混ざってくる。
「お!なんすか?」
「桜ちゃんには俺がスパイクを!」
「いや、俺がレシーブを!」
「お前らうるさい」
「なんだよ縁下、お前ばっか桜ちゃん見れていーなー。」
「義理の家族なんだからしょーがねーだろ。」
「はいはい、お前らここで降ろされたいかー。」
大地の一喝で大人しくなる猪突猛進コンビ。
「「大地さんすんませんっした。」」
結局いつものノリだ。
今度は個人的にお祝いでも持って行こうか。
そんなことを思いながら俺は窓の外、もうすぐ葉桜になりそうな桜を見つめ、思った。
end