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この世界の片隅で(恋愛小説短編集)

第1章 減らない料理


湊の自宅の前に着くと、乱れた呼吸を整えながら玄関のチャイムを押した。

玄関のドアを開けたのは、湊のお母さんだった。

「…シュリちゃん…。」

湊のお母さんは私を見て悲しそうな顔をした。

「あの、湊…いますよね?」

「シュリちゃん…湊はもう…。」

言いかけて、湊のお母さんは私を家の中に入れた。

仏壇に、湊の写真が飾ってあった。
私はその場に崩れ落ちた。

「湊…湊は?ねぇ湊、いるんでしょ!?出てきてよ!!」

泣き叫ぶ私を湊のお母さんが抱き締めた。

「シュリちゃん、湊は死んじゃったのよ…。」

「なんでっ…やだ、嫌だぁ!!湊、湊ー!!」

私は子どもの様に泣きわめいた。

私は、愛する人の死を受け入れられずに、彼の幻を見ていたのだ。
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