【イケメン戦国】 色に出りけりわが恋は <R18>
第5章 ~後宴~
佐助「失礼します」
襖を開けると、案の定、謙信と信玄がそこに居る。
特に会話もなく、思い思いに酒を楽しんでいるようだ。
その二人の間に横たわる、一頭のイノシシ。
もとい、幸村。
信玄「どうして帰った。てっきり・・・」
「色々と準備してくださったのに、すみません」
佐助の後ろから姿を現すなお。
信玄「今夜は君を諦めていたが、こうして俺の前に現れたとなると、もう遠慮はしないよ」
色気の漂う微笑を浮かべ、なおに手を伸ばす。
謙信「やめないか」
パシッとその手をはじくと、
謙信「良く帰ったな。まあ飲め」
佐助に杯を手渡した。
信玄「朝帰りでもよかったのに、どういったことだ?」
なおにそっと耳打ちする。
交易や商業で賑わう街で、一番評判がいい宿を用意したというのに。
「二人の時間は十分に過ごせました。そしたら、なんだかここに帰りたくなってしまって・・・」
信玄「まったく。人目を盗みお前の部屋に忍び込むのは大変だったんだぞ」
なおが居ない隙を見計らい、着替えを一式風呂敷に詰めた。
信玄「一応この世に名を馳せる武将だと自負しているのだが」
この俺が、女の部屋でコソコソと・・・思い出すと笑えてくる。
「すみません。お気遣いには感謝しています」
微笑み、酌をする。
信玄「いや、許さん。約束は覚えているな、なお。明日、お前の喜びそうなところにまた案内してやるから、必ず付き合え。それが償いだ」
「それは、喜んで」
謙信「秘蔵書をお前の部屋に置いたが」
佐助「あなたでしたか・・・」
ため息をつき、こめかみを押さえる。
謙信「遠慮なく役立てろ」
佐助「・・・そうですね。ありがとうございました」
謙信「“ございました”? ではもう役立てたと言う事か」
佐助(鋭いのは視線だけにしてほしい)
何杯目かの酒をぐっと酒を煽ると、
佐助「今夜は月がきれいでした。二人で窓から望む月が」
謙信「ほう・・・なるほど、風流だな」
可笑しそうに謙信が口元を緩める。
謙信「あと四十七・・・」
佐助「誰もコンプリートするとは言ってないでしょう」
ふざける上司に、容赦なく言い放った。