【イケメン戦国】 色に出りけりわが恋は <R18>
第1章 ~恋心~
壁にもたれ、足を投げ出し、顔の前で掌を懸命に動かす。
「・・・もう、無理・・・」
うだる様な暑さに、蝉の鳴き声。
佐助「本当に今日は暑いね」
言葉とは裏腹に、涼しげな表情の佐助が答える。
「全然そうは見えないよ。暑いの、得意?」
佐助「どちらかと言えば弱いタイプだったと思う。でも、戦国時代で何度か夏を経験してるから、もう慣れた」
だらけるなおに笑いかける。
佐助「戦国時代はちょっとした氷河期だったって説があるから、これでも俺たちのいた時代よりは暑くないのかもしれない」
「そうなんだ・・・」
しかし、暑いものは暑い。
「佐助君は、毎年夏はどう過ごしてたの?」
佐助「空調の効いた部屋で研究。一年を通して、季節感がまるで無い生き方をしていたな。なおさんは?」
「うーん・・・社会人になってからは、夏だからって特別何かすることは無くなったけど、前はよくプールや海に行ったり・・・」
佐助「・・・」
「・・・」
佐助「・・・目の前、海だけど」
「・・・!」
目を輝かせたなおが、紙と筆を持って佐助の前に座る。
「レジャーシートは?」
佐助「ゴザでいいんじゃない」
「ビーチボールとか、、無理かな」
佐助「骨組みは竹ひごで・・・いや、強度が心配だな」
「私、おにぎり作るね!いつにする!?」
二人は膝を突き合わせて計画を練る。
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まだ夜が明けきらないうちから、なおは台所で釜戸の様子を伺っている。
(楽しみだな・・・)
遠足の前の日のように、夜はなかなか寝付けなかった。海が楽しみ、と言う事だけでなく、
「二人だけで海・・・」
普段なら当然幸村も誘いそうな状況で、思い切って“二人で”
と告げると、
佐助「分かった」
微かに微笑む佐助に、なおの胸は潰れそうな程に締め付けられた。
(もしかして、佐助君も・・・そうだったら嬉しいな)
深く息をついて自分を落ち着けようとするものの、少し気を抜くとすぐ頬が緩んでしまう。
佐助にリクエストされたおにぎりを淡々と作りながら、期待に高鳴る胸を何とか抑え込む。