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Fate/IF

第1章 「過去の未来」 怨嗟の叫び


 走って、走って、走り続けて、たどり着いた先の廃墟には、一台の車が止まっていた。
 車の向こうに見えるのは、白く長い髪の女性。そして、さらにその向こうに見えるのは、黄金に輝く剣を振るう金髪の少女と、赤い槍を持った黒髪の青年が戦う姿。
 その場に反響する音も、闇の濃さも、建物が落とす影も、わずかな明かりの反射も――全てが、私のみた夢の中の光景と重なって、私は一瞬だけ、足が動かなくなった。だけど、それは本当に一瞬だった。

『――自害せよ、ランサー』

 まるで共鳴するように、頭の中に響いた――苦渋に満ちた声。
「だ、め――」
 私のかすれた声がこぼれ落ちると同時。少女と戦っていた青年は、自らの槍で、自らの身体を貫いた。
 走りすぎて、満身創痍だった。膝だって、笑っていた。それでも、私の足は、まだ動く。

 再び、駆けだした私は、もう止まることはなかった。

「子ども……!? どうして、こんなところに……!」
 驚きを露にする白銀の女性を追い越し、呆然と青年を見つめる少女の傍らをすり抜ける。廃墟の暗がりから、三人の人が現れても、私は立ち止まらなかった。
 自らの身体を串刺しにした青年は、呆然とした表情で、一筋の血の涙を流す。口から吐き出された赤い血が、地面に血溜まりを作った。
 そして、青年は、暗がりから現れた三人を見る。車椅子に乗った金髪の男性と、その腕に抱えられて気を失っている赤い髪の女性、そして、二人の後ろに立つ錆びた目の男性――
 槍に貫かれたまま、痛みをこらえるように背を丸めた青年は、そのときになって、全てを悟った。
「貴様らは……そんなにも……」
 地を這うような、低い声。その声と瞳に宿る怒りを感じて、たまらず、私は青年に飛びついていた。
 けれど、もはや彼の目には、その憎しみの対象となるものしか映ってはいなくて、

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