【R18 ハイキュー!!】幼なじみ 及川徹との場合
第3章 親友岩泉一の災難
買ったコーヒーのマグを持って前に座ると、
「あの……ありがとう」
ぺこりと頭を下げられた。
こういう仕草も可愛い。
でもこの感情は外に出しちゃいけない。
もう、二度と。
「……別におまえのためにやったわけじゃないから」
「……じゃあ、なんで?」
「なんつーか、……イラつくから」
カッコよくて、死ぬほどモテて、いつもちゃらちゃら女と喋ってるのに、たった1人、本気で好きな女には何も言えないヤツ。
及川徹。
アイツがずっと幼なじみのこいつを好きだったのは知ってた。
こいつに誤解されてることも。
こいつが及川が自分を嫌いだって誤解していることも。
お互いに好きなのに、通じない。
通じさせようとしない。
言わなきゃわからない。
想ってるだけで相手がわかってくれるなんて幻想だ。
そんなことありはしない。
だから、どうにかしてやらなきゃと思った。
「イラつくって、なにかした、私?」
「違う」
「じゃあ徹?」
「そういう意味じゃねぇって」
「じゃあ、なんで? 何か理由があったんだよね……?」
「……」
理由……
自分の気持ちにケリをつけたかったから。
それだけだ。
絶対に叶わないこの気持ちを捨てたかった。
だから、こいつに告白するフリをした。
わざと及川に聞こえるようにこいつに話しかけ、及川の不安を煽った。
焦って及川が行動に出るように仕向けた。
案の定、及川は俺にこいつを取られるんじゃないかとすぐに勘ぐってきた。
単純なヤツ……でもそんなアイツに俺は絶対勝てない。
「別におまえらのためじゃないから」
この気持ちは言わない。
絶対に。死んでも。
「徹は……知らないんだよね?」
「言うなよ」
「言わないけど……岩泉君と徹って親友、なんだよね?」
「……まあ、そんな感じだろ……きっと」
親友……以外に言いようがないだろ。
アイツとは、クソ川とは、腐れ縁以上の時間を過ごしてきた……親友。
でも、親友だから、絶対に言えないこともアルだろ。
言っちゃいけないことも……あるだろ……
*FIN*