第5章 再会
カコ カコ カコ カコ ……
馬車がゆれる。太陽が高い。
辺りも見覚えのある景色になってきた。
まさかまた、この家に行くことになるとは思ってもみなかった。
“養子”について、
帰ってから調べてみると
僕が知らなかっただけで有名なことだったらしい。
金持ちが世間体を守りながら
もて余す性欲のはけ口として考え出されたもの…
だいたいは訪れた先が客人へのおもてなしとして
“養子”に接待させる。とか
一見ただ友人宅にお邪魔したにしか見えない
ずるいやり方…
門と庭を抜け、
間もなく、屋敷についた。
変わらない執事のアルベルトさんが
僕らを迎え入れてくれた。
また失敗しないように彼の目はあまり見ずに
案内された居間へ向かう。
「ピーター君!」
聞き覚えのある声、
フェイ君が駆け寄ってくる。
「久しぶりだね。会えてすごく嬉しいよ。」
遠くから父のためにありがとうと、腫れた目で笑顔で言った。
式は長男のリヒトさんが取り仕切っているらしい。
沢山の弔問客への対応で、屋敷中の使用人たちが忙しそうにしている。
人と人の隙間から、リヒトさんとアルベルトさんが色んな人からお悔やみを受けている姿が見えた。
急にポンと
肩を叩かれたので振り替えるとルーク君がいた。
久しぶりだね、と会話をかわす。
再会に心から嬉しかった。
「そういえば…、奥様はどこかな?ご挨拶したいんだけど。」
僕がそういうと、
双子が同時に渋い顔をした。
少し間を置いてから
フェイ君が口を開く。
「母さんは…、去年亡くなったんだ。」
(!?)
ビックリしたのと同時に、
部屋の奥で人々がざわめきだした。
「……まぁ、なんて美しい…。」
「あんなお嬢様が…いらしたなんて…」
何事かと目をやると、
ヒソヒソと皆が称賛する声の先に
少女、が居た。
漆黒のドレスに身を包んだ、アナリアだった。