• テキストサイズ

アイサレテル [R18]

第5章 再会




「ただいま。」



父が帰って来た。


疲れきった顔で荷物を置いて母の容態を尋ねる。

問題ないと返事をし、夕飯の支度をはじめた。











母が倒れてから間もなく






父は事業に失敗し、仕事を失った。








病気の妻と、子供を抱え


先行きがみえなくなった父は


自暴自棄になり何日も酒に明け暮れた。



今はどうにか見つけた職場で働いているが、


それもいつ首を切られるかわからない


不安定なものだった。






「そうか…。なぁピーター、


去年の今頃、一緒に訪ねて泊めてもらった家を覚えているかい?」






…うん、と返す。







「実は昨日ご主人が亡くなったらしくてな。


随分お世話になったから…


明後日の葬式に行こうと思うんだが、


お前も一緒に…来てほしいんだ。」




え?と、びっくりして
包丁で指を切りそうになった。




(あのご主人が亡くなったんだ…。)






「僕も…一緒に?」









またあの少女に会える。 と






思ってしまった。













本当はずっと…気掛かりだった。









彼女は、元気だろうか






元気と言っても…あれだが












「…お母さんはどうするの?」






「妹に頼んで、いない間診てもらう約束をしてるよ。」







伯母さんがくるなら安心だと思った。






いいよ。付き合う、と返事をする。









「……ごめんな。…明日の夜に出発するから…準備しておきなさい。」















トントントンとまな板の音が響く。











(…?)






会話が終わっても、父がぼうっと


僕を見ていた。









「………ポトフ。」










「…ああ、…そうか。」









今日の父はいつになく疲れて見えた。





そしてなぜかよく分からないが、




父の“ごめんな”が


少し引っ掛かった。






/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp