第1章 目線
……ター…ピーター…ピーター
「…ん……」
「ピーター起きなさい。ほら、見えてきた
もうすぐ着く。日が暮れる前に着いてよかった」
カコ…カコ…カコ…カコ…
揺られながらぼんやりと
見開いた目に映ってきたのは
そびえ立つ一軒の大きく立派なお屋敷だった。
「わぁ…すごい。お城みたいだ」
カコ…カコ…カコ…カコ…
「これからお会いする方は、今後の私の仕事にとっても大切な人だ。くれぐれも粗相の無いようにね。」
朝早く出発したが、気づけばもう日が暮れ始めている。
馬車の揺れが心地よくて、眠ってしまったようだ。
いきさつはわからないが
今日から父の仕事に関わる大事な人の家で、何日間かお世話になる。
よかったらご子息もご一緒にと親子で招待されたそうだ。
自然の美しい地域で有名なところなので、僕は今日をとても楽しみにしていた。
「そういえば、お前より少し上のお子さんが居るらしい。仲良くしてもらいなさい」
ガタン!
ギィィィ………ィィ…
どす黒い大きな門がゆっくりと開いて
僕たちを招き入れる。
どうやら着いたらしい
カコ…カコ…カコ…カコ…
最初に目に飛び込んだのは
沢山の薔薇が咲き誇る美しい中庭だった。
血のような深紅の花弁を優しく幾重も重ね
一輪一輪が見事な芸術品となっていた。
とても大切に育てられているんだろう。
ふと、その中にひとりの少女を見つけた。
(女の子?……いや、大人のひと?)
幼くも艶かしい可憐な顔立ち
吸い込まれそうな潤んだ青い瞳
風がふわりと、
彼女のやわらかい金糸の髪を揺らした
ごくり
天使だと思った。
いや、悪魔か?
カコ…カコ…カコ…キキキキ…ガタン
ガチャ
「!!!」
馬車の扉がひらいた