第2章 期待
アナリア
それが彼女の名前なのか…
「知らないな。知りたくもない。」
なんだろう
どうやらフェイ君は相当彼女の事が気に入らないらしい。
二人に何があったんだろう
さっきの怖い顔がショックで、
それ以上何も聞けなかった。
そして彼は最後に『君も知ることが無いことを祈るよ』と、ぼそっと小さな声で言った。
夕刻になり、みんなで夕食を済ませた。
結局、ルーク君はずっと家の中に居たようだ。
書庫には行ったみたいだが、僕らがもう出た後で見つからなかったので諦めたらしい。
置いていかれたとすねるルーク君を、あやすフェイ君。
二人のその光景は、とても微笑ましかった。
自分には兄弟がいないから、少し羨ましく思う。
解散後、
父と僕は居間に移り、夜も更けて
二人で紅茶を頂いているとご主人がやって来た。
「連れてきたよ。ほら…来なさい」
ご主人が手招きをする。
何だろうとカップに口を着けようとした瞬間、
それは現れた。
「話したろう。この子がアナリアだ」
…………
さっきとは全然違う姿をしていた。
フリルを沢山あしらった
上等な深いブルーのドレスに
黒いチョーカーとリボンを着けて
うっすらとお化粧もしているのか
可憐な顔が一気に大人びて色気を漂わせていた。
「おお……噂には聞いてましたが……」
一瞬で心を奪われてしまった。
回りの男の目を
父の目を手で覆いたいくらい
連れ去って
どこかに隠してしまいたいくらい
彼女は美し過ぎた。
「!!!」
我に返ったのは、紅茶が膝をびしょ濡れにしていたのに気づいた時だった。
熱々じゃなくてよかった…
「ちょっと……着替えてくる」
父も見惚れているんだろう
誰の返事もないまま仕方なく部屋へ戻り
着替えを終えてまた居間に戻った。